原 雅明 セシル・マクロリン・サルヴァントは、若くして3度のグラミーを受賞し、メインストリームで称賛を得てきたジャズ・ボーカリストだ。ウィントン・マルサリスをして“こんなシンガーは、一世代か二世代に一度しか現れない”とまで言わしめた。2020年にはマッカーサー・フェローシップも受賞した。マッカーサー財団は受賞の理由を“多様な解釈力を駆使して、ジャズ・スタンダードやオリジナル曲に活気に満ちた、グローバルで黒人、フェミニスト的な感覚を吹き込んでいる”と説明した。彼女のアルバムを聴けば、その説明が大仰ではないことは分かる。特別な声の持ち主であるが、単にスタンダードを美しく歌い上げることを目的としてい…