多くの微笑みに彩られた映画である。何かが爆発するような笑いではなく、笑おうとするでもなくそれでもふと浮かんでくるような、それが微笑みであることすら認識される前の微笑み。自分がいまどのような表情をしているのかすら、わかっていない人だけが浮かべられるそのような微笑みに、この映画は幸福に彩られている。 「感動」を目指しているのだろうか、とにかく大袈裟に、号泣する人間の涙などを画面いっぱいに映して見せることが感情の演出なのだと信じているような人間には絶対に撮れない、稀有な作品である。号泣でも大笑いでもない、この幸福な微笑を前に、人はまだ「ラブストーリー」や「ヒューマンドラマ」などといったドラマ映画を撮…