のち複数の精神科を受診することになるのであるが、今から思っても ここのクリニックは少し変わっていた。 高級マンションの一室にあって、一見普通の住宅である。 ドアをあけても病院らしさはなく、リビングルーム・応接室にあたる ところに医師の椅子と患者の椅子がある。絨毯がひかれ、調度品がおかれ、 ちょっとセレブなお宅訪問のていだ。 椅子も少し高級な客様用の家具で、病院にありがちなパイプ椅子や丸椅子ではない。 医師も白衣を着ておらず、机もはさまずふかふか椅子に座って対峙する。 これは緊張させないような仕様であろうか… などと冷静に考えられたのは あとあとの事。 この日も子供を抱きつつ、滂沱の涙を流しなが…