かつて、ソビエトの船会社が横浜からナホトカや香港に航路を持っている時代があり、船が好きな私は何度か乗ったことがある。1970年代から80年代初めころまでの話だ。 あれは、たぶん香港航路の時だったと思う。船の食事は昼が正餐で、昼食時に翌日の昼のメイン料理を選ぶ紙が配られ、船客はふたつあげられた料理からどちらかを選ぶというシステムになっていた。1970年代だと、若い日本人旅行者は、この船で初めてコース料理というものを体験した。ソビエトの格安船だから、料理は貧乏旅行者の私の目でも「安っぽい」と感じたが、ナイフとフォークを使うコース料理であることに変わりはない。 ある日の昼のこと、翌日の昼飯の候補に、…