プルースト『失われた時を求めて』の読書を中断しているあいだに、加賀乙彦の短編小説集『イリエの園にて』(集英社、1980年)を読んだ。加賀が愛するプルースト、ドストエフスキー、トルストイらの作家ゆかりの場所を訪ねた印象をもとにした幻想小説集だ。収載されているのは、「イリエの園にて」「ドストエフスキイ博物館」「ヤスナヤ・ポリャーナの秋」「カフカズ幻想」「月夜見」「ドンの酒宴」「教会堂」の7篇。このうち「ドストエフスキイ博物館」~「ドンの酒宴」は、日本文芸協会の代表として、高井有一、西尾幹二とともにソ連を訪問した際の印象にもとづいている。 加賀乙彦の『イリエの園にて』 作品集の表題となっている「イリ…