テノーリオ・ジュニオル。この名前を聞くと、反射的に、粗いペン画で描かれた男性ピアニストの後ろ姿が頭をよぎる。それは20年以上前に入手したアルバム「エンバーロ (Embalo)」のジャケットの記憶であり、その帯には「ジャズ系ボサノヴァの最高峰、伝説のピアニスト、テノーリオ・ジュニオル唯一のリーダーアルバム」とあった。 その時点では全く知らないピアニストだったが、ちょうどブラジル音楽に関心が高まっていた頃だったので、「伝説」などと言われると、その伝説具合を確かめてみたい衝動に駆られて購入したのだろう。こういう場合、一度聴いてポイとそのままになることもあるのだが、このアルバムは頻繁ではないものの、そ…