ノモセ湿原を抜けると、車窓いっぱいにオホーツク海が広がる。窓を開けると、春の穏やかな風が頬を優しく撫でた。 私は今年の4月から社会人としての一歩を踏み出す。シンオウ地方の中心都市である、コトブキ市に本拠地を構えるシンオウ庁に入庁した。そして私は、出先機関の一つが置かれているトバリ市に勤務することになった。 シンオウ地方津々浦々を堪能したいと思った時に、シンオウ地方内を3年おきに異動するシンオウ庁に勤務することが打って付けであると考え、シンオウ庁を志望した経緯がある。 コトブキ大学を卒業して、ノモセ市の実家でくつろいでいると、トバリ庁から一本の電話が入った。「おはようございます、トバリ庁企画課の…