軍艦の支払いをコーヒー豆ですると言われて、誰が首を縦に振る? 少なくとも日本人には無理だった。 ナイスジョークとその申し出をせめて面白がってやる、ユーモアセンスも生憎と、持ち合わせてはいなかった。 よしんばバーター貿易にしろ、釣り合いが取れてなさすぎる。大航海時代のノリを二十世紀も三十余年を経た今に持ち出されては迷惑と、そう言って渋面をつくるのがせいぜい関の山だった。 「我が造船技術の躍進的な充実と完備とそれに円安が効いて既にブラジル政府が軽巡洋艦・各数隻三千トン級の貨客船十八隻の建造方を大使を通じて注文して来たことは周知の事実だったが、何分支払方法がブラジル特産コーヒーとの物々交換による方法…