〈昭和の忘れもの〉クルマ編㉒ 【スズキ マイティボーイ】 時折通る川沿いの草叢(くさむら)に、「マイティボーイ」が放置(不法投棄?)されていた。1983年にスズキから発売された、軽の“ピックアップトラック”である。 2代目「セルボ」のBピラー後方を切り取り、居住性に積載性を加えた異色のモデルだった。荷台はミニマムで中途半端の感は拭えなかったが、安価で遊び心を刺激された若者たちに「スズキのマー坊」の愛称で親しまれた。だが愛称の気安さとは裏腹な、このクルマにまつわる胸苦しい話を思い出してしまった。 *以下は、関係者の話を元にしたフィクションである。 その春、河崎聡子の部署に須々木君という青年が新入…