上下巻合わせて800頁を超える力作。原著は2002年刊行ですが、日本語訳が出たのは昨年2021年8月です。訳者の鳥山さんによれば、途中から巽さんと中野さんの二人に応援を頼んだとのことで、よくぞあきらめずに(抄訳にせずに)最後まで訳しとおしてくれたと、感謝、感謝です(笑)。 副題は「ロシア文化史」で、この文言を目にしなかったらたぶん読まなかったと思います。表題の女性「ナターシャ」は、トルストイの『戦争と平和』に出てくる貴族(ロストフ家)の令嬢で、なぜ彼女の「踊り」がロシア文化史と関係するのかのタネあかしは、本書の序章にあります。これは沼野充義さんが新聞の書評で触れているので、ここでは割愛しますが…