真夜中の「2声と3声のインヴェンション」 グレン・グールドのバッハのピアノ曲は、自分の息遣い(いや歌声か)に合わせてテンポを自在に動かしてしまうところがあり目(いや耳か)が離せない。 それはひどく孤独だが、人を拒絶する偏屈な孤高さはまったくない。 ピアノの鳴っている部屋のドアはいつも開放されているように聴こえる。 ワタシは「ゴールベルク変奏曲」をグールドで初めて聴いたのだが、いつの間にかそれが演奏の規準になり ほかの奏者の演奏が耳に入ると、グールドの盤を聴き直さないと落ち着かなくなるような経験をしてきた。 こうして聴こえてくる「ゴールドベルク」は、バッハなのかグールドなのか区別することも不要に…