オランダ文学を読んだのはおそらく初めてです。ヘラ・S・ハーセの『ウールフ、黒い湖 』( 原タイトル:Oeroeg, 1948 )は、オランダ領・東インド(現インドネシア)のバタヴィア(現ジャカルタ)を主要舞台にした小説です。そこはハーセさん自身が生まれ育った場所でもあります。美しい原風景をもとにしたノスタルジーがリアルに息づいていて、おもわず惹きこまれます。そこで起こる運命に翻弄されながら、二人の少年がかわした友情と、決別の物語です。 ヘラ・S・ハーセさん(1918-2011)は、2004年にオランダ文学賞を受賞されていて、非常に知名度の高い作家さんです。なかでも『ウールフ、黒い湖 』はベスト…