出会うべき2人が出会わず、一緒にいるべき2人が一緒にいられない。そんな光景は、自分よりも他の誰かについてのほうが胸を締めつけられるものかもしれません。寂しさや喪失は、その渦中にある人間にとっては痛みでしかなく、ロマンの入る余地がないからでしょうか。そういう意味では、歌は物語的な機能を果たすため、音楽的時間のなかに痛みを溶かす作用があります。もしも人生が、得るものより失うもののほうが多いなら、歌がなくなることはきっとないだろうと思います。 男が女と聴いていたアルバム|Helen Merrill*Helen Merrill (vo)Quincy Jones (arr, cond)Clifford …