音楽のもたらす効果というのは絶大だ。少し前のこと。朝、駅を抜けるためだけに通過する商業施設の中で、突然ベートーヴェンの『運命』が耳に飛び込んできた。 それもかなりの大音響で響いたものだから、私の心にも「ジャシャジャジャーン!」と、何か起こるのではないかという不安が瞬時に広がった。何故、朝っぱらから『運命』なのだろう。 その場所は、普段からBGMはある。ただ、聴き逃せる程度のもので、それは通りを走る車のクラクションと同じ程度、そこまで気に留めることはなかった。 『運命』は人を不安な気持ちにさせる。 一粒万倍日という縁起のいい朝に、悪天候をものともせず、意気揚々と歩いているときに、いきなり『運命』…