リモートワークをはじめて、無性に外へ出たくなるようになった。特に最近はやたらと天気が良いので、朝食から仕事のわずかな間に散歩をしてる。急こう配に歯向かって坂を上り、駅へ向かう人たちに逆らって、郊外をずんずん進んでいく。 大きな公園の木々に分け入る。朝の光に焚きつけられたのか、むせ返るような青い葉の匂いが鼻孔をくすぐる。その匂いは小さなころから見知ってきたもので、過去の光景がいくつか思い出された。僕は木や花の名前をほとんど知らないが、度々こういうことがある。そして、この現象の名前も知らないのに、こういうことが世の中の誰もに起こっていることを知っている。 音楽もそうか。 いや、僕にとっては、音楽の…