佐藤賢一の『かの名はポンパドール』(世界文化社、2013年)を読んだ。もちろん、ルイ15世の寵姫ポンパドゥール侯爵夫人(1721年~64年)の伝記を題材にした歴史小説だ。 直前にミットフォードによるノンフィクションの伝記『ポンパドゥール侯爵夫人』(邦訳:柴田都志子、東京書籍、2003年)を読んだばかりなので、同じことを読まされるだけでもしかするととてもつまらないのではないかという不安があったのだが、それからすると意外におもしろかった。 18世紀のパリが生々しく描かれている『かの名はポンパドール』 そのあたり、まずは小説の冒頭を引用してみる。 「夕暮れのパリは混み合う。大通りといえども、道幅はほ…