マリア・ルス号事件

明治5年（1872年）に横浜港に停泊中のマリア・ルス号（Maria Luz、ペルー船籍）内の清国人（中国人）苦力（クーリー）を奴隷であるとして日本政府が解放した事件。また日本が国際裁判の当事者となった初めての事例である。

1872年7月9日、ポルトガル領マカオ（澳門）からペルーに向かっていたペルー船籍のマリア・ルス（マリア・ルズ）が横浜港に修理の為に入港してきた。同船には清国人苦力231名が乗船していたが、数日後過酷な待遇から逃れる為に一人の清国人が海へ逃亡しイギリス軍艦(アイアンデューク号）が救助した。そのためイギリスはマリア・ルスを「奴隷運搬船」と判断しイギリス在日公使は日本政府に対し清国人苦力の救助を要請した。イギリス側から引渡しを受けた日本政府は、人道主義と日本の主権独立を主張し、マリア・ルスに乗船している清国人苦力救出のため法手続きを決定した。

日本国内でも娼妓という「人身売買」が公然と行われており、奴隷売買を非難する資格がないとの批判により日本は公娼制度を廃止せざるを得なくなり、同年10月に芸娼妓解放令が出される契機となった。