最近、在宅酸素を導入し、通院が困難だろうからと訪問診療にした患者がいる。 その患者の自宅を訪問すると、窓が大きく開かれていて、その小さめの庭にはよく手入れされた植木や草花とちょっと場違いなミニトマトが植えてあった。低い塀の先には畑、さらにその先に奥羽山脈の山並みが眺められる。患者は妻とふたりで庭を眺めながら楽しそうに待っていた。あまりにも穏やかな表情だったので、訪問診療でなくてもよかったかと感じたほどだった。妻は甲斐甲斐しく患者の世話を焼き、奥の部屋から予防接種の書類を探してきたりもした。夫婦でこんな感じで景色を眺めながら老後を過ごすのも良いな、と思いながら、車に乗り込んだ時に事務長が種明かし…