本について書かれた美しい本。 文春文庫の新刊「モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語」(内田洋子)を簡潔に表すなら、わたしにはこの言葉以外にありません。もちろん「美しい」のは本の造りではなく、書いてある中身です。そして歯切れのいい文章も。 ヴェネツィアの細い道を折れた路地の奥にある一軒の古本屋さん。店主と懇意になったことから、本の歴史をたどる内田さんの旅が始まります。タイトルに「物語」とありますが、フィクションではありません。足をかけ、資料を集め、遠い過去の本の行商人に思いを馳せたルポルタージュです。 北イタリアの山間地に、モンテレッジォという廃絶寸前の村があります。その昔、男たちは春から…