久さんの言説に従いヤクザの顧問弁護士を辞めた誠也は路頭に迷っていた。それにしても久さんとの別れは余りにも儚く感じられて仕方ない。この数年間は一体何だったのだろう。永久(とわ)の別れになってしまったのだろうか、そんな筈はない、彼は近い内に復活してまた自分を呼び戻してくれる。誠也はそんな淡い夢を観ながら一時放心状態の日々が続いていた。 だが何時までもまり子の世話になる訳にも行かず次なる就職先を探し出す。まだ経験の浅い誠也は個人で法律事務所を立ち上げる手腕も信用も金も無い。しかし何処を見てもパっとした事務所は見当たらない。職探しに翻弄していると以前お世話になっていた林田先生の事が気に掛かった。 あの…