前回の記事の続きです。 「楠木正成忠君神話の矛盾を気にしない日本人」に書いたことは間違いでした。徳川光圀などの日本史をある程度研究した人は、やはり現天皇家と敵対した南朝側の楠木正成を称賛することに矛盾を感じていました。 そもそも天皇家が二つに分かれた南北朝時代は、日本史を記述する上で、やっかいです。どちらを正統にするかで、元号が変わってくるからです。江戸時代に儒学者の林家が公式に作成した歴史書では、南北朝時代について、両朝の元号を併記するなどの工夫をしています。 しかし、水戸学に沿った「大日本史」では元号併記を認めませんでした。なぜなら万世一系であるからこそ天皇家は神聖であり、その天皇が治める…