著者:中沢啓治出版社:汐文社 全10巻。大きく1〜7巻までが被爆体験、8巻〜10巻が戦後風俗及び戦後社会情勢が絡んだ内容。 被曝体験のディテールは極めて細かい。特に7巻の作中小説『夏のおわり』にまとめられている。 「黒い衣服を着た人はヤケドがひどかったふくしゃ熱で服の柄が肉体に焼き付くほど焼けこげていました」 8巻以降では広島の路面電車からはみ出すように乗る乗客や三輪の自動車、キャラクターが口ずさむ流行歌、もんぺを着用する女性など、文化史としても見応えがある。 朝鮮戦争、レッドパージ、鹿地事件。 ヒロポン(覚醒剤)の流行、戦争孤児のヤクザ化、朝鮮人の医療差別。 愚かな軍国主義者、三光作戦への批…