綴り方の時間を作業に振り向けさせられるという不本意なことがあって後、竜太の心の中に変化が生じていました。 それまで格別の関心を持たなかった綴り方の指導に、意欲が湧いたのだ。できたら綴り方連盟とやらに加盟して、勉強してみたいという思いさえ湧いた。竜太は、校長は教頭の案じているような治安維持法の嫌疑が、綴り方連盟にまで及ぶとは、どう考えても信じられなかった。教師たちの多くは、天皇の少国民*を育成するという姿勢を基本に持っていた。優秀な教師ほど、その傾向が強いように竜太は思う。 *少国民・・・ 元々は「年少の国民。次の時代をになう少年や少女」の意味だが、戦時体制が進むにつれて、銃後に位置する年少の皇…