訓読 >>> 苦しくも降り来る雨か三輪(みわ)の崎(さき)狭野(さの)の渡りに家もあらなくに 要旨 >>> 何と鬱陶しいことに雨が降ってきた。三輪の崎の狭野の渡し場に、雨宿りする家もないことだのに。 鑑賞 >>> 長忌寸意吉麻呂(ながのいみきおきまろ)が、廷臣として何らかの命を帯びて紀伊へ旅した時の歌とされます。「苦しくも」の「も」と、「降り来る雨か」の「か」は、詠嘆。「三輪の崎」は、和歌山県新宮市の三輪の崎。原文「神之埼」とあり、「神」をミワと読むのは、大和の大神(おおみわ)神社の「神(みわ)」に基づいています。「狭野の渡り」は、新宮市佐野町の新宮港あたり。「渡り」とあるのは、佐野の南に川が…