黒白を 分けて緑りの 上柳赤き心を 持てよ喜右衛門 投票用紙に書かれた歌だ。 もちろん無効票である。 明治四十二年九月に長野県にて実行された補欠選挙の用紙には、とにかくこのテの悪戯が、引きも切らずに多かった。 (信州諏訪の風車。「これは地下のアンモニア水を汲みあげ稲田に引いてゐるので、この地方を旅する者の旅情をそそる」。大正末には百個以上も立っていた) 当選したのは、上柳喜右衛門。 12代続く酒屋のあるじで、無効票には明らかに、それを揶揄ったやつもある。 飲まれても 酒屋なりけり 上柳 まず以って、この一首が例としては適当か。 候補者氏名を書く欄で大喜利を展開する阿呆は、こんな頃から居たわけだ…