1962年東京生まれ。86年早稲田大学政治経済学部卒、同年(株)文藝春秋入社。92年〜93年コロンビア大学ジャーナリズムスクール留学。著書に、米国の調査報道の衰退を80年代の資本主義の変質から捉えた『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善)がある。 (上記内容は、『勝負の分かれ目』上・下、角川文庫の略歴から引用)
「がん征服」下山進 <所感> 非常に良書。 これまた良書だった「アルツハイマー征服」に続いての病気征服シリーズといったところか。 今回は癌であり、その中でも脳の癌である膠芽腫(こうがしゅ)がテーマ。 外科手術、抗がん剤、放射線がいずれも効果のない最強の癌だが、そんな膠芽腫の新治療法に挑む話。 本書が興味深いのは単純に治療の開発だけにとどまらず、薬事法や知見といった治療フェーズへの課題に焦点を当てていること。 そして楽天 三木谷氏のベンチャー魂に感服する。 本書のポイントは法的に薬の有効性を「証明」や「確認」ではなく「推定」となっていること。 なお、著者は敢えて直接的な言及は避けているが、ここに…
「失くした「言葉」を取り戻すまで - 脳梗塞で左脳の1/4が壊れた私」清水ちなみ <所感> 脳梗塞により左脳の1/4が壊死した著者が麻痺や失語症と闘いながらまたエッセイストに戻るまでの道を書いたノンフィクション。 本人のポジティブ力と努力に加えて、家族の支えや医療関係者の支えがあってそうなったのだろうが、何よりも運があったことを感じる。 人体における脳の役割はまだまだ未知のことが多い。 そんな中、確実に言えるのは脳へのダメージの影響は大きすぎるということだろう。 そしていつその時が来るかは誰にもわからない。 またその時に備えて何かできるかもわからない。 そう考えると今、普通に話すことができて、…
数か月前に読んだ本 認知症新薬(アデュカヌマブ~舌噛みそう!)がアメリカで承認されましたね。 開発したバイオジェンや日本のエーザイの株価も高騰したようです。 今朝たまたまついていたテレビに出てらした下山進さんというお名前に見覚えがありました。 そうか、数ヶ月前、武雄図書館の新刊コーナーで借りた「アルツハイマー征服」の著者か!とそのままテレビの前にかじりついていました。 アルツハイマー型認知症に関わる仕事をしていたこともあり、新薬承認のニュースは吉報の部類なのですが、懐疑的でもあります。 ドネペジル塩酸塩(エーザイの商品名はアリセプト)も、どこまで効果があったのか? 明らかに必要がないと思われる…
下山進『2050年のメディア』 『勝負の分かれ目』で、情報、経済、金融時代に躍進する コンテンツやメディアについて書いたノンフィクション作家 下山進さんが、 直近の20年に起こったインターネットによるメディアの大変革を明らかにしたもの。 特に、読売新聞や朝日新聞の考え方、戦い方が詳しく書かれている。 『勝負の分かれ目』と同じく業界人必読というか、 これを読まないと、現在のメディアやコンテンツについて議論できないかも。 2050年のメディア (文春e-book) 作者:下山 進 文藝春秋 Amazon
「アルツハイマー征服」下山進 <所感> サイエンス系ノンフィクションではサイモン・シンの「暗号解読」「フェルマーの定理」「宇宙創成」に並ぶ読むべき本。 ただしアルツハイマーが題材ゆえに悲しくも人間味が満載である。内容は本当に現在進行形の話。 本書は非常に章が多い。そのためテンポよく複数の物語が進み、読み手を飽きさせない。著者のジャーナリスト能力は言うに及ばず、純粋に筆力が素晴らしい。 印象的なエピソードは2つ。 ①エーザイが米国の製薬会社スクイプに販売権の渡す交渉の際に、先方に選択権がある状況を回避するために生理前のデータを提出した話。これはエーザイの担当者もさることながら、選択権がありつつも…