1990年(明23)今古堂刊。原作はエミール・ガボリオ(Emile Gaboriau, 1832-1873) の『オルシヴァルの犯罪』(Le Crime d’Orcival, 1866) というフランスの新聞連載小説である。原作では名探偵のルコックが活躍するが、多湖廉平(たこれんぺい)に置き換えられるように、登場人物はすべて日本人名になっている。パリ近郊の大柴(おおしば)村にある貴族の邸宅で陰惨な殺人事件が起きる。現地の判事や医師だけでは無理なのでパリから探偵に来てもらう。物語の中盤はガラリと趣向が変わる。財政が破綻した貴族が自殺に追い込まれた所を田舎貴族の好意によって救われ、財産目当ての結婚…