日本に於けるマゴットセラピーの濫觴は、実は二〇〇四年にあらずして、一九四五年にまで遡り得る。 そう、大東亜戦争末期のころだ。 亀谷敬三医学博士が機銃掃射を浴びた患者の治療に用いて、めざましい成果を挙げている。 (Wikipediaより、P-51Bへの弾薬補充作業) このことは、当時の新聞にも載った。 日附は六月十二日。一面を飾るような華々しさとは無縁だが、内容はさすが医者だけあって実際的な知識のみで埋められて、半狂乱の精神主義的傾向を少しも含んでいない点、記事の質はすこぶる高い。 亀谷はこう書いたのだ。 被害者にP51グラマン戦闘機の攻撃法を聞くと、田圃の中に一人ゐても人と見たら執拗に攻撃を加…