第一章 ビブリア古書堂 穏やかな春の陽射しが差し込む、鎌倉のある静かな路地。その一角に、ひっそりと佇む古書店があった。店の名前は「ビブリア古書堂」。店先には、古書を詰め込んだ木製の本箱が並び、ガラス戸越しに覗く店内は、天井まで届く本棚が所狭しと並んでいる。 今日もビブリア古書堂の店主、五浦栞子(おうら しおりこ)は、店のカウンターの中で、古書を整理していた。栞子は23歳の若き店主。肩にかかる黒髪は、古書を愛おしむように優しく揺れる。人見知りで、客が来てもなかなか声をかけられない。しかし、古書の話になると、その瞳は生き生きと輝き出すのだった。 そんな古書堂に一人の男性が訪れた。彼の名は五浦大輔(…