音楽は何が好きって言われれば、迷わずジャズって答える。またまたぁ、カッコつけちゃってさぁってからかわれそうで、27歳まで正直に答えず、そうだねぇ、何だって聞くけどねぇ・・・という具合にその時まで適当に友達に答えていた。 僕が27歳の時に父親が肺がんで死んだ。父親はジャズとタバコが大好きな仕立屋の職人だった。仕事場にはいつもタバコの煙が充満していて、そこが子供時代の僕と兄貴の遊び場だった。今思うと副流煙がマジでやばかったろうなという環境だったけど、タバコくさいその仕事場には、いつもジャズがかかっていた。高級紳士服の生地は子供の僕の目から見ても別格の色合いと艶があって、父親がタバコをくゆらせ、その…