脚を折ったら豚足を、モノが勃たなきゃオットセイの睾丸ないしは陰茎を。 病み苦しんでいる時は、患部と同じ部位をむさぼり喰うことで、恢復がより(・・)早くなる。 異類補類、同物同治の概念だ。 漢方、すなわち大陸由来の智慧として、一般には知られるが。――どうも、どうやら、この発想は、漢民族の専有物ではないらしい。 「古代ギリシャにもあった」 指摘したのは明治生まれの日本男児、伊藤靖なる男。 東京帝大薬学科の出身で、卒業後には技師として、製薬会社に腕をふるった――早い話が大正・昭和という時期の、クスリのエキスパートだった。 (八意永琳。薬と云えばこの人) 医史に通暁していても、さまで不思議はないだろう…