禁酒論者の言辞はまさに「画餅」の標本そのものである。 一九二〇年一月十七日、合衆国にて「十八番目の改正」が効力を発揮するより以前。清教徒的潔癖さから酔いを齎す飲料を憎み、その廃絶を念願し、日夜運動に余念のなかった人々は、酒がどれほど心と体を痛めつける毒物か、懇々と説く一方で、酒なき社会がどのような変化を遂げるのか、未来予測の宣伝にも力瘤を入れていた。 (Wikipediaより、禁酒党の全国大会) 曰く、「労働者が酒と絶縁することで、工場の能率は大いに上向き、米国の繁栄は更にスピードを増すだろう。しかのみならずその賃金を酒場で消費(つか)わず、家に持って帰るゆえ、家庭内不和は解消されて妻子の健康…