ルソーは、<一般意志>は、 《つねに正しく、つねに公けの利益を目ざす》(ルソー『社会契約論』(岩波文庫)桑原武夫・前川貞次郎訳、p.46) と言う。が、この世に<つねに正しい>ものなど存在するのだろうか。<つねに正しい>ものがあるとすれば、それこそ危険であろう。 《人民が十分に情報をもって審議するとき、もし市民がお互いに意志を少しも伝えあわないなら「徒党をくむなどのことがなければ」、わずかの相違がたくさん集って、つねに一般意志が結集し、その決議はつねによいものであるだろう。 しかし、徒党、部分的団体が、大きい団体を犠牲にしてつくられるならば、これらの団体の各々の意志は、その成員に関しては一般的…