安岡章太郎(1920 - 2013)『井伏鱒二対談集』(新潮文庫、1996)より無断切取り。撮影:田沼武能。 満洲北部、ソ連との国境警備部隊に、南方への転進命令がくだった。全兵士に赤褌が支給された。水中でフカに狙われぬためだという。途中で輸送船がやられて、海中に放り出されることも織りこみ済みだったわけだ。 安岡章太郎は肋膜炎が悪化して、起き上れず、独り置いてけぼりを食った。部隊はフィリピンのレイテ島へ移動し、全滅した。 私が入学した学校は中高一貫の男子校で、旧きバンカラを尊ぶ気風が強く残っていた。プールはなかった。その代り千葉県に海の家があって、普段は水泳部が管理していた。水泳部は校内屈指の伝…