「ふたり」 神木はカーナビと前方の道路を素早く見比べながら、 狭い路地を運転していた。 古い街並みに情緒を感じながらも 、助手席の千草のおしゃべりに少し うんざりしかけていた。 普段は千草と過ごす時間は穏やかで 、2人の会話もそんな時間にふさわし く、 緩やかに満たされて流れるものだった。 この半年はそんな逢瀬を重ねて来た。 千草の夫の一周忌が過ぎたのを機に 、思い切って旅行に誘ってみた。 半ば予期していたこととはいえ、二つ 返事でOKをもらった時は嬉しかった。 そして、神木のイメージでは千草にぴ ったりの城下町に車で一泊旅行の約束をした。 その日が来るまでは夢見心地で日々が 過ぎたが男はいく…