西行の旅について諸説があるが、西行の晩年の人生の旅はどのようなものであったのであろうか。不思議な西行の生きざまについて、古文書などを参考に追ってみた。 〇 花月を愛でる歌人、西行は保延6年(1140年)出家してより、吉野山の草庵で詠歌を楽しんだ。平安貴族社会から隔離した西行にとって、桜の花は並ぶものなき、最高に美しい、この世の命だった。彼は多くの歌を詠んだ。 たぐいなき 花をし枝に咲かすれば 桜にならぶ 木ぞなかりける 待たれつる 吉野の桜 咲きにけり 心を散らす 春の山風 誰ならむ 吉野の山の初花を わがものがほに 折りて帰へれる 吉野山 梢の花を見し日より 心は身にも 添わずなりにき 春ご…