匣の中の失楽 (講談社ノベルス)
小栗虫太郎「黒死館殺人事件」夢野久作「ドグラ・マグラ」中井英夫「虚無への供物」 それら三つに続く、いわゆる黒い水脈、四大アンチ・ミステリ、四大奇書と呼ばれる内の一つ。 四作品の中では最も新しいものであり、「虚無への供物」からの強い影響がうかがえる。
が、最も本格ミステリの匂いが強い作品でもある。
本棚の乾燥剤をせっせと交換中。 【一年に一度も読まなかった本は処分する宗派】には入信できそうもない。 窓の外のカーンと青い空を眺めながら、風の通るほどほど暑い室内で、本を並べ替える幸福。終了した時には何故か溢れるというオチも毎度のこと。 二三年に一度は再読する本を、こういう機会に拾い上げたりする。 これからの季節に備えて(?)探偵小説を数冊手前に配置換え。 夏といえば探偵小説。暑いといえば探偵小説。 精緻を極め虚構の限りを尽くした探偵小説(?)を読むと、理解しようと頑張るせいか脳にすら熱が籠りそうな錯覚。 理解しようしていたはずが、幻想に振り回される酩酊感にすり替わり、見知っているような見知ら…