原子力電池

(サイエンス)
げんしりょくでんち

物理電池の一種。名前の通り、原子力(原子エネルギー)を利用した電池。
一次電池だが非常な長寿命を持つので特殊用途で使用される。

概略

放射性核種(放射性同位体)の崩壊熱を利用し、その熱を熱電対(ゼーベック効果)を利用して電力に変換する。これは変換効率としては低いが、α崩壊なので遮蔽しやすいというメリットがある。
材料としてはプルトニウム238やポロニウム210などが利用される。核エネルギーはエネルギー密度が極めて高いので、性能のよい(寿命の長い、出力の大きい)電池が作れることになる。
燃料たる核種の崩壊が進めば次第に発熱量は低下し、出力も低下していくことになる。が、数年単位で高出力を維持できるため、現在でも外惑星探査分野では重用されている。逆に技術発達に伴い、体内埋め込み分野や太陽電池で電力をまかなえる人工衛星分野では使われなくなっている。

使用例

  • 心臓ペースメーカー:体内に手術で埋め込み、そうそう取り替えられるものではないから長寿命が必要とされた。扱いが面倒*1なのとライバルとなる化学電池の性能向上などにより現在では用いられていない。
  • ソヴィエトの海洋偵察衛星:ソ連が冷戦時に配備した軍事衛星。太陽電池では賄えないほどの大出力のレーダーを搭載し、海洋上の西側艦船の動きを監視する役割を担っていた*2。厳密に言うと原子力電池でなく原子炉というべきかもしれない*3。寿命が切れたら高軌道に放逐していたが、1978年にコスモス954号の一部が地上(カナダ領内)に落下している。
  • アポロ計画:月震計など科学観測機器の電力。月の「一日」は(地球時間で)2週間続く昼と2週間続く夜からなり、太陽電池では運用困難だったため。 -> http://www.masaakix.interlink.or.jp/apollo/d_apollo/apollo-12/ap12-rtg.htm
  • 外惑星探査機:火星軌道あたりまでは太陽電池に頼れるが、それより遠くになると太陽光のエネルギー密度が利用に引き合わないレベルに低下するので使用される。現役、過去含めて以下のような例がある。
    • パイオニア10号・11号:それぞれ2003年/1995年頃まで稼動していたが、交信途絶により以後の状況は不明
    • ボイジャー1号・2号:惑星探査機→太陽系外縁探査機。2020年/2030年頃まで稼動すると見積られている
    • ガリレオ:木星探査機。主電源として稼動、2003年9月に木星に落下処分
    • カッシーニ:土星探査機。主電源として稼動中
    • ニュー・ホライズンズ:冥王星その他EKBO用探査機。主電源として稼動中

なお、2011年8月に打ち上げられるアメリカの木星探査機「ジュノー」は、その電源には原子力電池ではなく大型の太陽電池を採用している*4

*1:まあ放射線源ですし

*2:太陽電池と違って充電池もいらないとか、低軌道での邪魔者たる太陽電池パネルが不要とか、そういう副次的なメリットも

*3:燃料は高濃縮ウランを使用している

*4:http://juno.wisc.edu/spacecraft.html

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