4. 「ハヤシさん、卒業すんすね。」「ん、お前も進級出来そうか?」 堂々と原っぱで葉っぱをまわす。どうせ誰も気付かない。俺はこのトラって後輩が大好きだった。バスの中で目をトロンとさせながら、スーパーで買った鯖寿司を食うコイツが。ライターのガスを吸ってラリってるコイツが。コイツはいつも一人で居た。本当に風変わりでイカしてた。 トラと別れ、14ホールの床に寝そべりながらぼんやりと、クソつまらねー演奏を聴いていた。 あまりにもつまらない、ブックオフの280円コーナーに並ぶクラシックとか、スーパーのmidi音源とか、不動産屋とか焼肉屋の白人ジャズの方がまだよっぽど聞いていられた。退屈が過ぎて、俺はうっ…
3. 可愛い、美しい、と来たら次は?って思いながら、セブンイレブンの前でタバコをふかす。 ヤベー、死に神がこっちに歩いてくる。全身黒づくめで、髪の毛の一部だけが赤い。こんな髪型のヤツは、当時はコイツぐらいしか見たことがなかった。「・・・」「はじめまして。」 ジローッと、下から上まで見られる。「なぁ、はじめまして。」「・・・はじめまして。」 黙って後ろを着いていく。俺はコイツが男なのか、女なのか、はっきりと確証が持てない。 日が暮れてオレンジ色になった空の下、気の触れた二人が何も話さずに歩いていた。工事現場の後ろにあるアパートがソイツの住処だった。 「これ、合鍵。これ、タバコ。これ、今日の食費。…