1924年(大13)武侠社刊。神田伯山の名演とされる筆記本で、当時は3巻で出されていたが、国会図書館のデジタル・コレクションには版元を改善社に変えた2巻目までしか収容されていない。講談は書かれて書物となった途端に文芸となると思う。歴史的に実在した侠客の一代記で、講談に取り上げられる頻度も高く、類書も極めて多い。江戸後期には各地で賭博が横行し、その土地ごとの侠客たちはその上納金で勢力を保ち、拡張した。今で言えば「反社会的勢力」なのだが、時には奉行から十手を預り、捕物に協力するなどの役割もあった。清水次郎長の場合は、物語における事件や抗争のメリハリが効いていて、行動原理となる義理や人情に命を賭ける…