訓読 >>> 1213名草山(なぐさやま)言(こと)にしありけり我(あ)が恋ふる千重(ちへ)の一重(ひとへ)も慰(なぐさ)めなくに 1214安太(あだ)へ行く小為手(をすて)の山の真木(まき)の葉も久しく見ねば蘿(こけ)生(む)しにけり 1215玉津島(たまつしま)よく見ていませあをによし奈良なる人の待ち問(と)はばいかに 要旨 >>> 〈1213〉名草山はただ名前だけの山だったよ。私の恋心の、幾重にも積もったその一つでさえも慰めてくれないのだから。 〈1214〉安太に通じる小為手の山の立派な杉や檜も、久しく見ないうちに苔生していた。 〈1215〉玉津島の景色をよくご覧になっていらっしゃいませ…