古代ギリシア天文学の集大成者プトレマイオスが、その著書『アルマゲスト』において惑星の運動を精度良く表現するために、導円の中心に対して地球と対称な位置に仮想的な等速円運動の回転中心であるエカントを導入したことはよく知られている。先日の記事「同心天球モデルと周転円モデルの比較(金星の場合)」では、考察の対象とした金星の公転軌道の離心率が0.0068と小さく*1、等速円運動する離心円によるモデルでもデータとの不一致が顕著にならなかったので*2、周転円モデルの更なる改良技法であるエカントの技法を述べることはしなかった。それに対して火星の場合は離心率が0.0934と大きいため*3、エカントの適用による精…