松五郎捕物帳 1935年(昭10)松光書院刊。作者の栗島狭衣(くりしま・さごろも)(1876~1945) は劇作家の岡本綺堂とほぼ同年代だったが、20代は朝日新聞の記者であるとともに文士劇の主要メンバーとして活動した。30代からは一座を組んで俳優として活動し、映画にも出演した。また劇作家および映画の脚本家として知られた。作家としては晩年の10数年のみ活動したに過ぎない。 昭和初期は「半七捕物帳」に加えて野村胡堂の「銭形平次捕物控」が人気を博していた頃で、この本のまえがきにも「捕物帳といったやうな興味をそゝるものが、一番出版界の弗箱になるといふ話だ。」と語り、版元の社長から執筆の勧誘を受け、「意…