童話『やまなし』のもともとの題名は『蟹』であったとされる。童話『ひのきとひなげし』(初期形)表紙余白に「童話的構図 ①蟹,②ひのきとひなげし,③いてふの実,④ダアリアとまなづる・・・・・」と,また童話『青木大学士の野宿』第七葉裏に「ポランの広場,銀河鉄道,風野又三郎・・・・・蟹」と記載されていた。「蟹」が賢治作品にメインキャラクターとして登場するのは大正12年(1923)4月8日に新聞発表されている童話『やまなし』などの作品からだと思われる。創作月の前後関係は分からないが同じ年の童話『サガレンと八月』では母の言いつけを守らなかったことで犬神に「蟹にされてしまうタネリ」として,また童話『ガドルフ…