そのスプーンは変わっていた。 気づいたのは、50年前、Eがまだ小学生だった時だ。テレビで警備隊の隊員が巨大星人を倒そうと、巨大な超人間に変身する際、いつものアイテムと間違ってスプーンを空にかざしたのを見て「これはいいぞ!」と興奮した。 台所で手頃なスプーンを探した。でも、小さかったり、大きくても、くすんでいたりで、ときめくようなスプーンが無い。こんな時、遊びで入ってはいけないと言われている大人の部屋に忍び込んで物色するのが常だった。とはいえ、大人の部屋にスプーンなんて期待薄である。それでも、何か代わりになる良いものがないかと探し続けた。キラッと光る金属の細長い物があればと… そして、父の机の引…