めちゃくちゃ面白い。今年読んだ本の中ではプラトンの各著作に並んでぶっち切りで良い本だった。 人類がその時々で人体という対象をどのように見ていたか、客観的に見ていたかについて考察した本である。一読して印象深かったのは、解剖学の長い停滞であった。身体を解剖しても、何がどうなっているか、位置関係やはたらきを解明するのは容易ではない。生きた人間の解剖はリスクが大きすぎるため、死体を扱うしかないのも大きな制約である。先人たちの気の遠くなるような忍耐と執念の蓄積、重みを感じることができた。 その他に印象的だったのは、やはり坂井が挙げていたキーパーソン、2世紀のガレノスと16世紀のヴェサリウスの二人である。…