母がまだ認知症と診断される前だった。母の様子は、盆と正月に帰省した折にしかわからなかったけれど、それでも年々、気になることが増えていった。料理の手順が違ったり、味付けが変になったり、調味料を片付け忘れたり、そんな感じのうっかりが、珍しくなくなってきた。帰省するたび、母が小さくなっていく感じがして、何かしてあげたいと、あれこれ思い巡らせていた。 指先や頭を使う機会を増やしたらいいのでは考えて、ある年末に PlayStation を買い、ゲームを教えた。しばらくの間は母もゲームをするようになり、帰省した時に一緒に遊ぶのが習慣になった。実際、認知機能の低下にどれだけ効果があったのかはよくわからない。…