第1章 ヨットを持つ少女(前編) 豪華列車のパーラーカーと呼ばれる車両は、実は「応接室」という名前とはかけ離れた代物でした。中央に2列の回転椅子が並んでいるだけの、ごく普通の客車なのです。しかも、本来は自由に回転するはずのその椅子も、ポーターが周りに積み上げる手荷物のせいで、ほとんど動かすことができません。結局のところ、乗客は足を置くスペースさえままならない状態で旅をすることになり、この「特別車両」に追加料金を払う価値があるのかと疑問に思ってしまいます。とはいえ、カリフォルニア南部のサンディエゴへ向かう場合、選択肢は普通車両かパーラーカーしかありません。そして2月のある穏やかな晴れた朝、ロサン…