今月の文庫本新刊で一番の話題となるであろうものは、新潮文庫「姫君を 喰う話」でありますね。著者は宇能鴻一郎さんであります。 坪内祐三さんの「文庫本を狙え!」が続いておりましたら、間違いなく取り 上げられましたでしょう。 宇能鴻一郎さんは、その昔は大ベストセラー作家でありましたが、若い頃に に芥川賞を受けられて、相当に期待されたはずですが、その後の歩みはそうし た期待を裏切るようなものであったようです。 当時でありますから、ほとんど転向作家(といっても戦前左翼だった人が 右翼に転じるというのではなく)のような形で、学究肌の純文学作家がエロ小 説作家に成り下がってしまったという受け止められていまし…