時間よ止まれ 娘が大学を卒業した日のこと。 自宅マンションの玄関ホールで袴姿の若い女性とすれ違った。 娘と同じ大学に通う同級生だった。 そばにいた彼女の母親は、頭がボサボサでスウェットを着ている僕に気づいて振り返った。 「あれ、安武さん。はなちゃんの卒業式に行かなかったの?」 卒業式の数日前、娘に「親は出席できないの?」と尋ねた。 「普通、大学の卒業式に親は出てこないやろ」 やられた。ちゃんと、確認しておくべきだった。 娘は過去の出来事が頭をよぎったのかもしれない。 中学や高校の卒業式で、僕が人目をはばからず「おめでとう!!!」と叫んだり、いきなり娘にハグをしたりしたので、今回はそれを避けたか…